shonblog’s diary

日々感じたこと。日記。思想。精神。宗教。自然と人。人間の構造をわかりにくい文章で探求していきます。

簡単に言語化できるものに価値はない。

 久しぶりにスティーブ・ジョブズのインタビューの動画を見た。その動画ではジョブズが一度アップルをクビになって再び帰還したあと初めに行った広告キャンペーンのインタビューだった。おそらく社員と思われる人たちに向けて、これからのアップルの方向性を示していた。それは「Think Different」と呼ばれとても有名で、過去の偉人を起用した「クレイジーな人がいる」で始まるCMが代表例である。今考えてもこの広告というのはかなり特殊である。普通企業が広告を出すときは、商品やサービスの説明をして、それがいかに顧客に有益かみたいなことにフォーカスするが、この「Think Different」は、一つの信念をひたすら語っている。MaciPodといった素晴らしい製品のことには一切触れない。

 このインタビューでジョブズは、ひたすらアップルという会社の存在意義や価値観を語っている。アップルというのはコンピュータを作る会社であるが、それは決して機能的な製品やなにか素晴らしい技術が搭載された最先端なコンピュータを作るということにフォーカスしているわけではない。もちろんそれを重要なことだが。それよりも実際に人々がアップル製品を作って何ができるかなどユーザー一人ひとりが最高の仕事ができるような製品作りというのが信念である。あくまで重要なのは”人間”の体験なのである。ここが他の企業とアップルの違いである。

 彼らの考え方の軸は"Why"である。HowやWhatではない。つまり価値である。”なぜ”をひたすら自問する。”なぜ”それが必要なのか。どうやってではなくなぜだ。一度自分自身に問うてみるといい。今自分がやっていることは”なぜ”やっているのか。それがもしはっきりしているのであれば、あなたは情熱をもってそれを続けられるでしょう。もしはっきりしていない人ややりたいことが見つからない人は、このWhyを自問してみるといい。人は何か見つけようとした時に、外側の情報ばかりに目が行きがちだ。情報というのは方法論や知識が多い。それをそのまま取り入れてもなかなかピンとこない。なぜなら何をしたいのかという自分自身への問いをやっていないからだ。情報化社会においてこのような状況に陥ってる人は多いのではないか。ひたすら情報を見て知識ばかりを吸収する。しかしそれが自分の血や肉にならない。それは自分の中に眠っている原動力に目を向けていなく、ただ知識を目にして安心しているからだ。

 今回ジョブズのインタビュー映像を見て、内容はともかくたたずまいや喋り方から何かひしひしと伝わるものがあった。今回の映像に限らずこの男をいつ見ても、何か掻き立てられる思いがふつふつと湧いてくる。なぜこう思えるかは、ジョブズ自身とことんWhyを突き詰めてそれに軸を置いているからにほかならない。人間というものは感情の生き物で感情は言語化できない領域であって、しかし、すべての人の出発点でもある。そこに問いかけるためには表面的な知識ではなく、心である。ここが空っぽだとどんなに素晴らしいアイデアも人の心には響かない。これは人間特有のセンサーなのである。逆に言えば、簡単に言語化できるものに大した価値はないだろう。ひたすら自分自身の内面に入って、今まで光が届いていなかったところまで光を当てれば自ずと道は開けると信じている。